ファンシーなものからポップなものまで、多くのガラス会社で生産されてきたヴィンテージグラスの象徴的存在のミルクグラス。日本でも新たに生産を始めた会社もあります。未だにミルクグラスを製造している会社はかなり減った一方で、これは年々愛好家が増えている事実があるということでしょう。輝きを増し続けるそのガラスの魅力について迫ってみました。
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ミルクグラスというと、一般的にまるで陶器のように白いものをイメージされる方が多いと思いますが、時代や文化によって少しミルクグラスも姿形を変えているので、その誕生から迫ってみます。
起源を遡りますと、16世紀のイタリア、ベネティアで最初のミルクグラスが生産されたということで、実にその歴史は400年になります。ミルクグラスと名付けられるきっかけにもなったホワイトだけではなくブルー、ピンク、黒、黄色などありました。もちろんガラス素材自体にそのような色が付いているわけではないので、製造の過程で着色料を加えられるわけですが、当時からカラーバリエーションがあったのですね。
誕生は400年以上前のフランスでしたが、それが今世界中で人気のファイヤーキングを始めとするアメリカ、ミッドセンチュリー期のミルクグラスまでの変遷を見ると、スタイルが違うたくさんのものが生み出されていて、その定義が非常に曖昧でした。
「有田焼」みたいに「佐賀県有田町で焼かれる磁器」のような厳格なカテゴライズがあればわかりやすいのですが、どうも私が調べる限りでは確証を得ることができなかったので、いわゆるミルクグラスの特徴からやんわりと定義したいと思います。
ウィキペディア英語版によりますと、通常のガラス素材よりも光の屈折率が高く、光の拡散効果が高い素材が使われることによって、透き通った透明ではなく、白い絵の具を水の中に落としたような白濁色のガラスらしいですが、うっすらと透き通ります。
モノによっては半透明だったり、ミルクのように濃い白いものもあります。チンダル現象やら遊色効果などによるものらしいですが、その仕組みを理解しないとミルクグラスの魅力を知ることができないわけではないので、ここでは割愛します。
そもそも、マクベスエバンスのようにはっきりと遊色効果を実感できるものだけであれば、非常に楽なのですが、パイレックスのミルクグラスやファイヤーキングの後期のようなホワイトが深いものもあったりするので、「一見セラミックやプラスチックのようなのだけれど、確かにガラスで、独特の風合いを持っていて、気持ち透き通って見えるもの」くらいの認識で良いと思います。
ただ、ガラスを着色しただけのようなミルクグラスと呼ばれるものもありますし、ガラス会社によって風合いも異なりますので、単純に自分の好みのものを選んだら良いでしょう。
私はアンティークなミルクグラスよりも、アメリカミッドセンチュリー期の物が好みです。
今、人気のミルクグラスといえば、ファイヤーキングを筆頭にパイレックス、グラスベイクやフェデラルなどのミッドセンチュリーを代表するアメリカのガラス会社を想起される方が多く、そしてそれらの製品の特徴として「OVEN PROOF」(耐熱効果)を謳っているものが多くあるので、「ミルクグラス=耐熱効果のあるもの」と誤解される方がいますが、そうではありませんので注意が必要です。
これらの製品は、ホウケイ酸ガラスと呼ばれる、一般に使用されるガラス素材の中では最も融点が高いもので作られたため、オーブンなどの高熱下で調理しても大丈夫だったのですが、すべてのミルクグラス製品でそのように製造されたわけではありません。
特に当時の製品基準では大丈夫でも、現在の調理器具ではまた基準が異なりますし、そもそも経年劣化により、当時のコンディションではないものもあるので、いくら耐熱効果のアイテムでもレンジにかけたり、オーブンでの使用など注意が必要です。
ちなみにファイヤーキングのマグなど、ホウケイ酸ガラスを使用したものは融点が高いので、熱い飲み物を入れても素材が全く溶け出すことがないので、飲み物の風合いに一切干渉することなく、そのものを楽しむことができるそうです。その恩恵を意識したことはないのですが、確かにミルクグラスで飲むコーヒーは格段に美味しく感じます。
難しいことは抜きに、気軽に楽しめるのがミルクグラスの一番の魅力ですね。